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4.6 波候(長期波浪統計値)の予測可能性

2〜3日先の波浪は、気象予報モデルにより得られる日々の気圧配置あるいは海上風を入力として、波浪予報モデルを用いて得られる。気象モデルによる天気予報の実用的な精度は現状では、10日程度先が限界であると言われている。そのため、この方法による波浪予報もせいぜい10日先までにしか適用できない。
すなわち、観測値を入力として物理法則に基づき、日々の天気状態を決定論的に、いわゆる初期値問題として予測するには、初期値の不確かさに起因する限界がある(カオス理論)。これは現在使われている数値予報モデルが、将来いくら精密なものになっても超えられない限界であり、理論的研究によると、それは大体2週間程度である。そのため、この限界を超えた1ヶ月〜季節予報に対しては、「日々」の予報ではなく、例えば10日程度の平均的な天候状態の予測やその確率的予測が目標となる。
この長期予報に関する研究は継続中であり、この予報法が実用化される将来は、平均的な予報値(例えば500hPa高度の10日平均値)を得るというアンサンブル予報が用いられることになるだろう。
アンサンブル予報については、気象庁が1996年から開始している。波浪予報に関しても同様の考えが成り立ち、波浪予報モデルを用いた10日以上の長期波浪予報は精度が低く実用には適さないと考えられる。そこで気象のアンサンブル予報結果を応用した波浪の長期予報法が考えられる。これには次の二通りの方法が考えられる。つまり(1)初期値の異なる気象モデルからの計算結果をそれぞれ入力として、波浪予報モデルによりそれぞれ予測計算を行い、その確率・統計値を求める方法と(2)気象のアンサンブル予報の対象となる高層気象のパラメータ(例えば500hPa高度の平均値等)と波浪の統計パラメータ(例えば月平均波高等)との関係を予め求めておき、アンサンブル予報値に基づいて波浪統計値を予測するものである。どちらにしろ、長期予報値は確率的なものを対象にせざるを得ないと考えられる。
本研究結果によると、後者の方法による波浪長期予測が可能となることが示された。つまり、波浪統計値(波高偏差)と500hPa高度偏差の間には高い相関があり、この統計関係と気象モデルから得られる大気パラメータを用いて、次の方法により、数ヶ月〜1年の波浪長期予測が可能と

 

 

 

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